桒原駿の備忘録

囲碁棋士桒原駿のブログです。

今日の手合 28局目

連日更新三日目です。今回は昨日に引き続き広島アルミ杯予選の碁について書いていこうと思います。相手は伊藤優詩五段。伊藤先生は私が院生の時に入れていただいた研究会でお世話になった方で名前の通りものすごく優しい先輩です。

私の黒番です。

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このような立ち上がり。よくありそうで意外と見かけない配石な気がします。

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8で9に出ると難解な変化になりますが実戦はツいで力をためて10からの攻めを狙いました。

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6が思ったより厳しかったので5では6とコスむべきでした。

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白が中央を固く打って黒を左辺に追い込む作戦を取り、黒は左下の白地を減らしつつ左辺に地を作れたので不満ない展開です。

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白の打ち込みに対して2、4が微妙でした。ここで力をためても5がいやらしい手で右辺の二か所の白は直接攻めに行きにくい碁形になってしまっています。

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ここでは1と逆に上辺に入り込んでしまうのが良さそうでした。左上は厚いですが死ぬことはなさそうなので生きてしまえばなかなかの荒らしです。

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右辺に直接行くのは無理そうなので1ともたれに行きました。あわよくばここをサバいてしまおうという手です。2の最強の抵抗に対し3が狙いの一着。キリ違えている石のどちらかをあえて捨てることで上辺を荒らそうという考えです。

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目論見通り上側の2子にして捨てて上辺を荒らすことができました。

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白の二度のキリをかわして27まで完全に荒らすことができました。しかも先手なので大成功です。

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中央の2子も逃げ出して下辺と右辺と右下に不安定な白を作ることができました。これらを上手く分断して攻められれば勝ちに近づきそうです。

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2から分断した後15のノゾキに対して16ががんばった手で20からの攻めにつなげることができています。

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下辺を二眼で生きさせて地も得したので黒優勢です。

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ヨセです。20と右辺を手抜いた所で23が厳しい。

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生きるためには1が最善ですが2、4と3子が取れてしまえば勝負あり。黒勝勢です。この後もう少し打って黒中押し勝ちとなりました。

序盤のサバキが成功したおかげでその後は比較的打ちやすい展開でした。今週の碁の中では一番の快勝だったと思います。では。