面白い棋譜探しの旅 part9 連笑ー卞相壹
また面白い棋譜を発見したので紹介していこうと思います。
今回は1月18日に行われた春蘭杯世界囲碁選手権三回戦から連笑九段と卞相壹九段の碁を見ていきます。卞相壹九段はこのブログでは初出ですが世界戦でも結果を残している韓国の若手強豪です。昔僕は院生A、Bクラスの頃に東洋囲碁というネット碁サイトでよくプロの対局を観ていたのですが、入段したばかりで三段くらいだった彼がほぼ毎日対局していた記憶があります。ちなみに同じくらい多く打っているのを見かけたのがしばとらというハンドルネームの人でした。誰でしょうね。
さてそろそろ棋譜の方に入りましょう。連笑九段の黒番です。
このような立ち上がり。昔は右上の形はわかりやすいイメージでよく使っていたのですが最近は研究されるにつれて複雑な変化が増えて選択するのに覚悟が必要になってしまいました(笑)
1は従来通りですが2で堂々と抑えるのがこの形では最近よくあります。以前のようにツケなどでサバキにいく方が分かりやすかったんですけどね。7までは同様に最近見る形なのですがここで8は初見でした。なかなか面白い手だと思います。
よくあるのがこのように黒が隅を取って白が外を取る分かれと
白がどちらもシノギに行く分かれの大まかに分けて二通りです。
実戦図8を先に打ったのはこのように同じような分かれになった時1と8の交換が黒悪手になっているという白の狙いです。
実戦はこのような分かれになりました。黒が隅、白が外のタイプでしたが先ほどの図よりも黒は手堅く白は軽快なのでどちらも面白そうです。5は気づきにくいですが上辺の白を動けなくしつつ二間シマリの薄みをカバーする渋い一着です。
白は右辺と下辺から中央にかけて勢力を築き、黒は左上を手堅く受けて左下は三々に入り地を稼ぎました。ここまで形勢は五分くらいでどうやって荒らすかが黒の悩みどころです。
1に打ち込みすぐさまこれを捨て石にして右上を取り込みさらに地を増やしました。柔軟な打ちまわしですが右下の白も大分大きいので自分ならこうは打てないです。
ここで下辺をどう囲うのかと並べてる時は考えていたのですが
白は1から上辺をサバくことを選びました。なんとなく淡々と稼いでいく黒のスタイルにペースを崩されたように感じます。多分下辺を広げた方が大きいですからね。
ここで手番が渡った黒がどう荒らしていくかがこの碁の面白ポイントです。
1で様子を聞いて3から打ち込んでいったのが一つ目。そして20に受ければ危ないと見るやすぐさま21と曲げて捨てたのが二つ目。そして下辺の利きを見た25が三つ目。この三段構えで黒は右下が全部取られて得たのは左下の1目だけ。に見えるかもしれませんが実はこれで黒得しているんです。これが囲碁の面白い所ですね。
ちなみに1でツグとハサミツケからちょうど良いところに黒石が待ち受けていて生きてしまいます。
ここから白は下中央をまとめようとしますが
黒は地を増やしつつ削っていきます。ここでも右下が取られているのを存分に生かしていますね。
1と広げたのに対し黒は2と厳しく侵入。白も3と最強手で応戦しますがまた12、14と黒は捨てることを選択。
中央を大きく捨てたことでさらに大きい左辺の白を切り取って勝負あり。42までで黒中押し勝ちとなりました。
右上を捨てた所までは白が良かったのですが右下を捨ててからはずっと黒が主導権を握り続けたとても面白い捨て石の応酬だったと思います。相手の勢力が大きく見えても淡々とした連笑九段の打ちまわし。見習いたいですね。
では今回はこの辺で。また次回お会いしましょう。