面白い棋譜探しの旅 part10 黄雲嵩ー謝爾豪
少し間が空いてしまいましたがまた面白いと感じた棋譜を紹介していきたいと思います。12月13日に打たれた甲級リーグから黄雲嵩七段と謝爾豪九段の碁です。
甲級リーグと最近の碁を交互に並べてるのでこのように若干古めの碁が出てくることがありますがそれはご愛嬌ということで。
謝九段はこのブログでは初出ですが世界戦優勝経験もあるトップ棋士なので知ってる方も多いと思います。
黄七段の黒番です。
このような立ち上がり。よく見る形かなーと思ったら21が初めて見る手でした。右辺を特に手厚く打とうという手ですね。この三々定石の変化は説明すると長くなるのでそもそもよく見ねーよ!という方はここはスルーしておいてください(笑)
10のカタツキから抑え込みと目いっぱい上辺を広げてやろうという考えです。対する白は13のノビキリから15と構え冷静さを見せました。
ズバリこの碁の面白ポイントは黒の意欲的な勢力拡大に対して白がひたすら冷静な手を選び続けるところです。昔のドラマとかでいうと不良生徒と熱血教師みたいな感じでしょうか。不良生徒が更生するかどうかに注目ですね(?)
黒が1から5と下辺を広げたのでそろそろ中央を消しにいくかなーと思ったら白は6と隅に侵入しました。確かに6から8は隅を荒らす手筋でカラいといえばカラいですがさらに中央が厚くなりました。
黒もこのように隅を攻めに行く手段もあったと思うのですが実戦はさらに厚くすることを選びました。
1に対して中央に入っていくかなーとまた思っていたら2と今度は下辺に侵入していきました。この手も99%死なない手なのでとても冷静と言えるでしょう。黒は白が入ってこないので3、7と打って中央をほぼ囲いきりました。AIによるとこの時点では白が良いそうです。
今度は白、上辺に入っていきます。黒もいっぱいに応戦してこの碁では初めて少し難解な形になってきました。しかしどうなるのかなーと見ていたら
(3は4の上)
なんと全部捨ててしまいました。確かに左上は固まりましたがとてつもない冷静さです。
3と白が左下を取り切ったのに対し黒は左上を捨て気味に打って16、18を連打することに成功しました。お手本のような固い敵陣の荒らし方です。
(3は4の左、5は8の左)
左辺を荒らされた分中央を削りたい白は1のツケから一目を二度捨て石にして9、11に繋ぐ冷静さ。確実に黒を固くしてしまうのでなかなか選びにくい打ち方です。
黒もここはコウを挑まず冷静に5から9と二目を取りました。
20までで一段落したので形勢判断してみると・・・
黒が良さそうです。
いや、負けてんのかい!と思わずツッコミたくなりました。ずっと白が優勢なような打ち方なんですけどね。
しかしこの直後に黒に失着が。
1は手厚い手ですがここでは2が大きく下辺を荒らされては地が足りなくなってしまいました。1で2に打っていればはっきり黒が良さそうでした。
(10は65、11は12の右、17は68、38は75の右)
最後は白の中押し勝ちになりました。整地すれば5目半の差でした。
残念ながら不良生徒更生ならずでしたがお互いの一貫した主張のぶつかり合いでとても面白い碁だったと思います。黒の失着がなければ白が冷静なまま負けていたであろうことを考えるとさらに面白いですね。
しばらく中国の棋戦が無かったので書いてませんでしたが最近また増えてきたのでもう少し更新頻度を上げられたらと思います。(あくまで希望)
ではまた次回お会いしましょう。