面白い棋譜探しの旅 part7 党毅飛ー廖元赫
今回は6月1日に中国で打たれた大循杯21節から党毅飛九段と廖元赫八段の碁を紹介していこうと思います。派手さが無い分若干知名度が低めですが実力は世界トップクラスの二人でどちらも落ち着いた棋風のイメージがあります。
廖八段の黒番です。
このような立ち上がり。よく見る分かりやすい布石ですね。一時期私も白番ではこればかり打っていたような気がします。
1(8)
一番スタンダードな三々定石でシチョウが悪いので12とハネました。
見たことのある形だと思ってうっかり1とケイマするとこの場合は2でカカエられて取られてしまいます。
ハネた後のよくある定石となりました。8では一路高く打つこともあります。10では
一見1から三子を逃げ出したくなりますが以下全て淡々と受けられていても白の石が強い黒のある左辺に向かっているし下辺も星の石と分断されていて石の方向が悪いのが分かると思います。この形では三子は逃げ出さない方が良いというのが定説になっています。
2が争点。白は黒の模様を制限した上に逃げる気の無かった三子を取らせることができました。
2に対して黒が三子を取らず手抜くと今度は2が援軍になり逃げ出しから8がピッタリで黒がまずい。
2でここに打たないと3が大きく、三子の逃げ出しも自然消滅してしまいそうでこれは白が嬉しくないです。
4と5はどちらも大きく見合い。12が気づきにくい手ですがなかなかの好手で勉強になりました。
置いてみると分かりやすいですが例えばケイマの手で右辺のヒラキなどを打つと2のボウシが上辺の白を攻めつつ中央の模様を広げる一石二鳥の手になっています。実戦のケイマはこれを防ぎつつあわよくば左上の黒を狙おうという絶妙な一着でした。
1は石の強弱、方向を把握できていないと打てない好手。白が上辺をケイマしたので中央の価値が低い、右下は白も黒も元々強く相手を固めても痛くないという条件が揃ったことで打てる手で、この状況以外だと悪手になる可能性が高い一着です。
1も方向の良い手。一見ここでは
上からグングン押していきたくなりますが前述の通り中央の価値が低いのでこれは右辺の黒地を固めてしまっただけです。実戦は右辺の黒を制限しつつ上辺の白を補強することに成功しています。
1、3で9のハザマを引き出したり13と一本打ってからツガせることで17がピッタリになったり、筋が良いを辞書で引くとこの図が出てきそうなくらいですね。
落ち着いた碁らしくここから早くもヨセに。こういう展開で一番注目すべきは中央。中央を制すものが碁を制すと言っても過言ではありません。
全く不安要素がない白に対し黒は左辺が完全に生きていなかったので、白はそこを突いて中央に顔を出すことができました。これは大きな戦果です。
ひたすら半目勝負でお互いとてつもなく繊細なヨセ合いです。このあたりは並べているだけでも勉強になりますね。
最後までヨセきって白の半目勝ち。石の方向にフォーカスして紹介してきましたが本当にお互い筋が良く並べていて気持ちいい碁でした。派手な碁も良いですがこういういぶし銀のような碁も良いですよね。ではまたお会いしましょう。