桒原駿の備忘録

囲碁棋士桒原駿のブログです。

今日の手合 21局目

今日は緊急事態宣言が解除されてから初めての手合。およそ70日ぶりでした。院生になって以降これだけ長いこと棋院に行かないことはなかったので道に迷わないか心配でした。

無事にたどり着けたので今日打った碁について書いていこうと思います。新人王戦二回戦、相手は武井太心初段。武井君は院生時代Aクラスで何度も対戦した後輩の一人で、たまにその頃のメンバーの何人かで一緒に遊んだりもします。

では内容へ。私の白番です。

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このような立ち上がり。お互い手厚さを意識した穏やかな布石です。

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4のツケに対して5のサガリになったのが意外で、上辺の封鎖と右辺のハサミをどちらも打てたので少し打ちやすい展開になったと思いました。

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1の逃げ出しから5のキリ違いと一気に戦いに。コウ材が少なくコウにハジキにくい碁形なので9、11は微妙だったかなという局後の検討での話がありました。

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単に1と逃げ出して右下は右辺側から利かすのではなく5など下辺側からの利きを見た方が戦いやすそうでした。

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ちなみに5に対して6と取りに行くと逆に白がまずい。

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1、3はコウ材作り。白もコウ材が無いので4と先回りしてコウにされる心配を無くしました。6までとフリカワリになりましたが白が得しているように見えます。

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ちなみに左下を受けるとコウにされて4のアタリをコウ材にされてしまいます。抜き抜きになると実戦に比べて左下は4目の所に放り込んでいることになるのでこちらの方がダメージが大きそうです。

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6を押せたことで優勢を確信しました。12のツケは中央に対するもたれ攻めを狙ってはいますが狙いよりはテンションが先行しています(笑)

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前図5のノビでは1のマガリを予想していました。2のツギになりそうですが3と飛ばれると右下の4子救出と上辺の1目引っ張り出しがどちらも大きく見合いになっています、形勢は白良さそうですが自信を持てるほどの差ではないと思いました。

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先手で左辺に侵入して上辺のコスミに回ることができました。狙いは少しでも援軍を増やして上辺の黒2子を取り込もうというものなので、左辺の5子の価値は低く切断されてもまるまる全部取られでもしない限りあわてて補強する必要はありません。

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6は第一感だったのですがなかなか良さそうなポジションでした。黒に反発させることで上辺を確保し次に12から左辺をサバくのにも援軍になっています。

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上辺のケイマで左辺を守ると4~8で上辺を分断できます。

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タツキの石を活かして良い感じに左辺を生きることができました。

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1で膨らんできた時もこのようにカタツキが働いてサバけています。

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下辺は味が悪く難解でしたが右下の1目を抜かせることで下辺を確保することに成功しました。部分的には損しましたが12の抜きと14のキリが打てているので優勢のままです。

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最後まで味の悪い所を突いてきましたが全て冷静に対処し白中押し勝ちとなりました。

久しぶりの手合で気合が入っていたのか全体を通してまずまずの碁が打てた気がします。まだ環境的には平常時のようにはいきませんが碁はこのような内容を続けていければと思います。ではまた次回。