桒原駿の備忘録

囲碁棋士桒原駿のブログです。

今日の手合 11局目

今日打った手合について書いていこうと思います。相手は片岡聡九段。私の白番です。

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このような立ち上がり。10は比較的珍しくハサむなら一路上や星などに打つことが多いですが、最近この位置も有力なのではないかと思って少し研究しています。

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1とハサむと12まで一般的な変化ですが13とヒラいた時に△の位置にシマリがあると少し白は不満。かと言ってここに打たないとAやBに黒から詰めるのは厳しい手になります。

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一方1とハサむとこれも12まで一般的な変化ですが左下にシマリがある分少しだけ黒が戦いやすい。こういう理由で実戦のハサミを選びました。

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1~6と大場を打ったあと下辺を分断してきました。これが一番の黒からの強手です。

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実戦。元々この分断は想定していたのでこのように対処するつもりでした。この形はどう見ても黒がまずいだろうと思ってたのであまり読んではいなかったのですが、意外に黒の形が粘り強くこの後白が困りました。

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ここではノゾキからカケに行くのではなくこのように1とボウシするのが良かったようです。2には3として半分つながっているような顔をしておきます。無理やり黒から切る手はあるのですがそれはあまり黒は得しなそうです。ちなみにAにはB。

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実戦。このタイミングの1がなかなか曲者で頭を悩ませられました。2から突き抜けば白悪くないと思ってたのですが実際はそうでもなかったようです。

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1に対して2が最強の応手で、手筋を駆使してこのように下辺の黒を取ることはできそうですが、実はこの図は黒が少し良いのです。1が厄介なのは捨て気味に打って相手の応手によって有利になる方を選択できるようにしている点なのです。

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この2も強手ですがこのように捨てて打ってこれも黒が悪くない。なので最初にカケて取りに行ったのが悪手だったのだと思います。

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実戦。これでは白悪そうです。

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1の逃げ出しからシチョウ当たりに反発して勢いでフリカワリました。変化としては面白いですがこれも黒が厚いです。

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1から3と分断し5に手抜いて白が下辺を守ったのに対して7。この手が好手で流れるような打ちまわしに敵ながら感動しました。

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隅」を生きつつ上辺を抑えつけて16。白からはあまり選択肢がありません。

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黒は2から連続して強手を放ってきましたがここは13が好手で白が上手くしのぎました。

f:id:kuwabara_igo:20191031224709p:plain15(21)

ここも白が1から分断し右辺の黒の眼に迫ることで得しました。20で黒がうっかり21にツナイでしまうと20にぶつかられてコウになってしまいます。

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右辺は得しましたが中央がやはり厚く黒勝勢。

序盤で形勢を損ねてしまって少しもったいなかったですが力の差が出たと思います。最近は強い相手との対局が多く負けが続いていますが、とても良い経験になっていると思うのでこれを糧として次にもっと良い碁が打てるようめげずに精進します。では。