桒原駿の備忘録

囲碁棋士桒原駿のブログです。

今日の手合 10局目

しばらく間が空きましたが今日の手合シリーズも遂に10局目になりました。今回は早碁のアルミ杯若鯉戦の予選、相手は小山空也四段。私の白番です。

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このような立ち上がり。ここで

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形は悪そうですがここにグズんで切るのがなかなか好手らしいです。ちなみにここに黒が打たなければ白はすぐに同じ所を先手で利かします。

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一例。黒は1目を抜いてAの切りを残し右辺に回ることに成功しました。もちろん白が悪いということはないと思いますが一応黒の狙い通りです。

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実戦。先ほどと同じように黒は上辺の白石を取りつつ先手で右辺に回りました。白としては上辺の取られた数が増えた分、黒にとって大悪手の2と3の交換を打たせたという言い分です。どちらの図が良いかは判断が難しい所ですが。

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ちなみに先ほどの2と3の交換を打たなければ、このように黒がツブレてしまいます。18で単にAにつないでもBに置かれて攻め合いは白が勝ちます。

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上辺は黒が稼いでいるので白も地を確保しようと思い、三々に。6までとなったこの場面でとても悩みました。本当にどこに打てばいいか分からず1時間くらい考えたい所でしたが、隣のよくしゃべる時計があろうことか秒読みを読んでくるので打つしかありませんでした。

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ちなみにLeelaによると1と打ち込んでいくのが有力だそうです。一見黒の方が石が多いので有利のようですが、真ん中の黒2目と右下の白石に距離があるので白も戦えるという判断なのだと思います。

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実戦。多分1はあまり良くない手で2と打たれてうーん…という感じでした。3も悪手で4と打たれてうーん×2でした。うーんが増えただけですね。

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3では最初は1などを考えていたのですがこのように軽くかわされて下の白への攻めに転じられると黒はあまり良くないと思いました。

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どうやら1と打ち込むのが有力らしく、2に対しては3とツケて全体を軽くするのが良いようです。実戦は3の手に気づかず2から分断されるからと思い1は却下していました。

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実戦。この展開ははっきり白がダメですね。白に大した厚みができたわけでもないのに黒の確定地が増えてしまいました。

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難解ですが右辺の味を見つつこのように戦いを求めるべきだったかもしれません。実戦はあまりに簡明に悪過ぎました。

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実戦。白は戦いを起こすしかない状況でしたが、黒の1のツケが悪手で8のキリが生じたことで白にもチャンスが回ってきました。

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しかしここで1が悪手。2のキリ一本が上手く11までAからのコウ仕掛けが残ってるうえに下辺の黒がスッキリしてしまったので黒大優勢になってしまいました。

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1では下辺を分断しに行くべきで、難解ですが例えばこのようにコウになればAなどにたくさんコウ材があるので白がやれます。実戦はここがあっさり取られてしまったので紛れがなくなってしまいました。

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ちなみにキリ一本を打っていないと今更4と切っても下には受けてもらえず外から取られてしまいます。実戦はキリ一本を考えていなくて左辺3目取れれば悪くないと思っていましたが甘かったですね。

この後は白の苦し紛れで少し盛り上がりましたが結果は中押し負け。短時間で良い判断を下すのは本当に難しいですね。また勉強します。