桒原駿の備忘録

囲碁棋士桒原駿のブログです。

今日の手合 12局目

今日打った手合についてまた書いていこうと思います。相手は河野光樹八段。私の黒番です。

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このような立ち上がり。黒の三々に対して手抜いて先にカカッてきました。

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右下がこの向きのコスミの場合白は三々に対してこの1の方向から抑えるとシチョウで10の石が取れます。しかし単にこの定石を打つと16のシマリが黒に取って絶好になってしまいます。

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そこで実戦のように先に1とカカッておくと同じ形になったときにシマられずに済むという寸法です。

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実戦。左上の変化は選択肢がたくさんあり悩んだのですがこれはあまり良くなかったようです。

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こちらの図の方が地が多く薄くないので良かったようです。

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実戦。1では普通に2の左あたりにハサむ手も考えましたが3のハサミを狙って趣向をこらしてみました。右上の進行はあまり見たことがありませんがLeelaの評価はさほど悪くないようでした。

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実戦。ここまではほぼ互角のようです。7ではツナイでいた方が手堅く、実戦のノビでは少し断点が残ってしまいました。

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実戦。この9がNHK杯で言うところの今日の私の一手です。この手を打つ前の場面ではほぼ互角なのですがとても打つところが難しく文字通り勝敗を分ける一手でした。

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例えばここで辺を荒らそうとするとこのように隅も左上を固めてしまう上、左辺の黒もまだ心配です。

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逆に隅を荒らそうとするとこのように外の白がガチガチに固まってしまう上黒は生きるのに精一杯で地を持つこともできません。

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そこでこのツケです。例えば黒が素直に2と受けると3のツケから奇麗に左辺を荒らすことができます。荒らすどころかむしろ黒の方が厚いくらいですね。

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ちなみに白が3のツケに対して4にノビると黒は5とハッてこれはどちらからおさえられても地を持って生きられるしぶとい形になってます。

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1に対する一番良い応手はこの2です。この場合は隅に地を持って生きて黒は満足です。しかし外の白も厚いので形勢は少し黒が良いというくらいです。

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実戦。これは地を持って左辺を荒らしたうえ左下の白に味も残ったので黒成功です。

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黒はこのような変化も考えられましたが善悪は不明です。7で実戦のオサエを打った時相手に少し反応が見えたので多分こちらのツギを予想していたのだと思います。

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ちなみに1,3と打たれた時のこのシチョウを良くするために中央の押しからノビキリを打っておきました。

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白は地で大分損をしたので1と強手を放ち寄り付きを狙いましたが、さらに稼ぎつつ生きを確保して確実な優勢を築きました。

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実戦。3は部分的に損な手なのですが、

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1からこのような手が見えていたので手入れの意味で打ちました。どのくらいこの進行が現実的かは判断しかねましたが優勢だったので安全運転で行きました。

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実戦。地合的な余裕があるので左辺を確実に強い石にして右辺を攻めつつ△の石が取られなければ勝ちだと思ってました。

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お互いにツナガって弱い石が無くなったのでヨセ勝負になります。

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実戦。先手ヨセは打たれましたが中央の断点という最後の不安要素を取り去りました。

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大きなヨセは打ち切り確実な勝勢と言って良いでしょう。最後まで打って黒4目半勝ちでした。

ここ最近負けていましたがその負けにも意味があったぞと言えるくらいの内容だったと思います。勝ちにこだわるのは性に合いませんが、もうかれこれ本因坊戦は4回目の予選Aなのでそろそろ最終予選に行きたいなと思ったりもします。また頑張ります。