桒原駿の備忘録

囲碁棋士桒原駿のブログです。

初台碁聖戦

皆さん明けましておめでとうございます。

今年1記事目は1月4、5日に参加させていただいた初台碁聖戦で打った碁を紹介しようと思います。初台碁聖戦とは初台囲碁クラブという所で行われている研究会のようなもので、一番上のSリーグはプロと全国大会優勝かそれに匹敵する実力のアマチュアしかいないので特にハイレベルです。僕は同じ場所で行われている多岐技会という研究会に院生になる前からお世話になっていて、その縁でこの初台碁聖戦でも数年前から勉強させていただいています。

普段は1日4局打って優勝を決めるのですが今回は第15回記念ということで2日制で全6局を打ちました。持ち時間は40分の30秒です。

前置きはこの辺にして対局に。相手は栗田佳樹君。昨年学生本因坊や十傑、ネット棋聖などを獲得し、棋聖戦ファーストトーナメントではあの趙善津九段を破り準決勝まで勝ち進んでいるトップアマの一人。院生時代は共にAクラスやプロ試験で何十局も戦った仲間でもありました。

私の白番です。

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このような立ち上がり。

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実戦。よくあるやつですね。2にツメてるのがぴったりな分若干白持ちのような気がしましたがまぁ良い勝負でしょう。

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実戦。ここも見慣れた定石です。この局面でいつも悩むのがAを利かすか問題。大体白がAと打てば黒もBと守るのですが相手を固めてしまう意味もあります。かと言って打たないとすぐに黒は逃げ出しからAのアテを利かしてきます。この場合は右上の黒とのバランスが良く黒地ができやすいので白は打たない方が良かったようです。

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実戦。この形は1から3と下がるのが次にAからBなどと眼形を奪いに行く手が残るので最近では良い手とされています。実戦も5ですぐにここに行く手もあったかもしれません。ちなみに

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このように打つのも悪くはないですが次に白から黒の眼形に迫る手があまり厳しくないのでやや前図には劣ります。

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(1は三々)

これは最も一般的な打ち方かもしれませんが隅を地を持って生きられてしまい白甘いです。

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実戦。白は黒を窮屈に生きさせて外を厚くし11の打ち込みへ。少し白が良さそうに感じます。

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どうせ窮屈に生きるなら黒はこういう打ち方もあったかもしれません。次に白は左辺をヒラきそうですが、右辺が地になれば黒の方が実利が大きく弱い石もないので優勢に見えます。Leelaも手早く左上を生きてしまうのが評価は高かったです。

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実戦。2が軽率な手で黒に機敏に立ち回られてしまいました。白1子は身動きが相当取りづらくなっています。

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白は2と反発する1手でこの後AにはB、BにはCと受けていて白良しでした。

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実戦の後このように逃げ出すと左上の白に被害が出てしまって良くないです。

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実戦。逃げ出すと損がひどそうなので色々利かしつつ捨て石にして外側を白っぽくしました。黒がポイントを上げたので少し良さそうですがLeelaによると12ではAあたりに囲った方がより優勢だったみたいです。打ってるとAは消極的に見えるので12に打ちたいですけどね。

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実戦。白が模様を築いて黒が入る展開に。白が取れば勝ち、黒が取られれば負けみたいな展開です。後からだと利かなくなるのでAとBの交換はあった方が良かったねと局後の検討で話していました。それがあれば白も薄いので相当難しい戦いになっていましたが、実戦は白の厚みが勝っているような気がしました。

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実戦。4が5に代わってしまえばこれは白がイケているように見えます。

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ここまでで黒がツブれて白中押し勝ちになりました。軽率な失着が出て悪くなりましたが、そこから立て直すことができたので全体的に見ればまずまずの内容だったのではないかと思います。

2日間に及ぶ初台碁聖戦の結果は5勝1敗でなんと優勝。1日に何局も打つのが苦手で始まった時はなんとか3位あたりに入れればいいかなと思ってたくらいなので、年明けからこんな幸運があっていいのかという感じでした(笑)

手合は新年から強敵が続きそうなのでこの流れを生かして(?)少しでも良い碁をお見せできれば良いなと思っています。今年もよろしくお願いいたしますm(__)m