桒原駿の備忘録

囲碁棋士桒原駿のブログです。

面白い棋譜探しの旅 part6 申眞諝ー申旻埈

今回は韓国で打たれたKB囲碁リーグオールスター戦第8局から申眞諝九段と申旻埈九段の碁を紹介していこうと思います。ブログでは申眞諝九段の碁は2局目ですね。理由は私が好きだからです、はい。

では棋譜を見ていきましょう。申旻埈九段の黒番です。

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このような立ち上がり。向かい小目から片方を二間高シマリするのは最近たまに見かけるようになりました。

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碁盤の上半分と下半分で綺麗に勢力圏が分かれ、それぞれ取り残された石をどう扱うかで今後の展開が決まりそうです。

そして次の手以降の白の着想がこの碁を紹介しようと思った理由です。自分ならどう打つか是非予想してみてください。

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素晴らし過ぎませんか??ぶっちゃけ良いのかどうかは私も分かりませんが石が生き生きしてるのが伝わってくるような気がします。こういう手を打ちてえ。

無粋な事を言うと1の手自体は絶芸の候補手で何度か見かけたことはあるのですが、それ以降の石の流れという観点ですごく感動しました。

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黒の1とツケてからの三々も面白い着想ですが先手で14のカケに回れれば白が良さそうです。

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1に対して黒が2と反発したので白は隅に侵入、綺麗に生きました。黒は地が足りないので上辺の白を攻めに行きます。

f:id:kuwabara_igo:20200517194345p:plainちなみに反発した2で普通に受けるとこのようにぺったんこにされてしまいます。

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白は攻められそうになりましたが四子を捨てることで逆に外側を取ってしまいました。17のツケが絶妙な一着でしたね。

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17のツケは普通に受けるとこのような筋が待っています。

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1や7から分かるように黒は劣勢を挽回するために無理やりでも上辺の白を攻めようとしています。しかし20や22がピッタリで中央の黒も眼が無いので、もはやどちらが攻めてるのか分からない状態です。

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中央の黒の眼が心許ない中左下のツケ切りを決行。ここを荒らさねば生きても勝てないという判断ですね。

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左下は黒が荒らしましたがその隙に白が中央を冷静に仕留めてここで黒が投了、白の中押し勝ちとなりました。

説明するのは難しいのですが無駄な石が無いというか石の流れが良いというか、要所要所で欲しい所に白の筋があったような一局だったと思います。私もものすごく調子が良い時はこういう碁が打てることがあって、そういう時はニヤニヤしながら帰るのですがいつもそれが引き出せる申眞諝九段は本当にすごいと思います。

皆さんにも何となくでもこの気持ち良さを並べて味わって欲しいです。ではまたお会いしましょう。