桒原駿の備忘録

囲碁棋士桒原駿のブログです。

研究会の碁⑥

今日は研究会で打った碁について書いていこうと思います。相手は三浦太郎初段。昨年の11月に入段を果たした新初段です。彼とは以前に他の場所で対局したことがあったのですがプロになってからは初めての対戦です。

持ち時間は30分30秒。私の白番です。

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このような立ち上がり。9と一路控えてかかるのは馴染みが薄いかもしれませんが最近まれに見る形です。善悪は分かりません。

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実戦。2に対してAとカケるとデギリから難解な変化になります。研究はしていますが今日は気分じゃなかったので3のツケを選択しました。

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実戦。打ち込みから上手い具合に左辺を分断することができたのですが、17が若干やりすぎで20と打たれて少し形が崩れてしまいました。

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17では1くらいに打つのが良く、次に黒がすぐ左辺の白石に厳しく迫るのは難しいし、手が回ってきたらAなどに打って下辺を拡大する狙いもあります。

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実戦。形が崩れかけていたので1から技を出して修復しました。頭を出した上で13と守れればまずまずだと思います。

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実戦。4のツメが想像以上に厳しい手で中央に目の心配がある石を抱えることになってしまいました。1では

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1と補強しつつ相手の根拠を脅かすのが良い手で、4などとしっかり繋がらないといけなくなるのでこちらの方が勝りました。

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このあたりから秒読みに入って荒ぶり始めます。まず5が中央の一団を心配した手でしたがそう簡単に死ぬ石ではないので6の上のケイマを最優先で打つべきでした。6のカタツキが大きく形勢を損ねました。15、17についてはもう聞かないでください。よくある大錯覚です。

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実戦。形勢が悪いので相手の石を攻めたい所です。1から無理やり二目を逃げ出し15と強硬手段に出ました。

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お互い真っ向勝負のぶつかり合いで訳が分からなくなってきました。

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当初は1と打って中央の黒を取りに行こうと思ってたのですが何か嫌な予感がしたので止めました。何かあったかなと局後に検討していたら隣で見ていた福岡航太郎初段が6、8という素晴らしい手筋を教えてくれました。持つべきものは鋭い直感と読める後輩ですね。

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お互い最強に頑張った結果攻め合いに。上の黒は4手なので白は11からその分手を伸ばさないといけません。

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実戦。読み通りなんとか絶妙に黒の魔の手をかいくぐってAにはBと打てば5手なので攻め合い勝ち。ホッと胸をなでおろしていた所

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1と打たれて何ぃいい!!??となりました。はい、全然考えてなかったです。とてもまずい状況ですがコウにするしかありません。

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コウ材がないのでどこを打たれても解消する予定でした。中央を連打され危ない状況でしたがついさっき教えてもらった一線ハネからコウにし返して活路を見出しました。

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しかし実は黒は前図の6で1と差し込んでいれば相当難解ですがおそらく白はツブレていました。秒読みあるあるですがラッキーでしたね。

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常にコウ材が無いので負ける前提で2に。3の解消に対して中央を切断して目を奪い、さらに12からここも切断して攻め合いに持ち込みました。

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(1は2の下、7は8の左)

中央の攻め合いは負けましたが実は本命は下辺です。30個の壮大な捨て石ですね(笑)

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(2は1の下)

3が右辺の黒との連絡を見た上手い手です。黒は隅を生きてヨセ勝負に。相当細かいです。

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ヨセきって最後は白1目半勝ちとなりました。秒読みになってからはひたすらバタバタしていましたがなかなか面白い碁だったのではないでしょうか。

もし手合で当たったら先輩の威厳(あるのか?)を見せたいと思いますが三浦新初段には春から頑張ってほしいですね。皆さんも応援してあげてください。