桒原駿の備忘録

囲碁棋士桒原駿のブログです。

今日の手合 26局目

また今日打った碁について書いていこうと思います。天元戦予選B決勝、相手は田尻悠人五段。田尻先生は若手棋士Twitterを企画するなど普及にも積極的な方で、僕も声をかけていただいて参加して最初の担当の時は色々とお世話になりました。

私の白番です。

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このような立ち上がり。あまり見かけない独特な展開で始まりました。

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白がコスミツケからハサミで攻めに行きました。6ですぐに8あたりに飛び出すと白はすかさず6のハネを決める予定でした。ここは形の争点ですね。7では隅を守らず8とさらに厳しく攻める手もあったかもしれません。10はなかなか意欲的な手です。

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相手が薄みを無視して封鎖しにきたのでそこを1と破っていきました。9までは勢いでしたが冷静に9で10とつなぐのも有力だったようです。ワリツギから14のキリで早くも大きな戦いになりました。

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右辺は比較的平和な分かれになりました。11では

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このようにフリカワる手もありました。実戦はこの局面の判断がつかず怖くて止めましたが右上が大きく白良さそうでした。

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2のノビがものすごく大きい所なのでここに打てれば少し白打ちやすいかなと思っていました。4、6は10のコスミ出しを成立させるための手筋です。

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ここでこの1が気づきにくい強手でした。

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一見1が先手だから何もないのでは?と思ってしまいそうですが2、4と右辺を無視して突っ込むのが厳しい手で、5ともう一手打っても白は二眼を作ることができません。

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知恵を振り絞って打ったのが1のキリ。3から5がなかなかの好手でAのコウにすることができました。前図は全く読んでなかったので冷汗でした。1の手があってよかったです。

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コウになったことで安心して3と解消したのですがこれが大悪手だったようで、どうせこれでもAからコウにする手が残っているのでつがずに保留するのが良かったようです。

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右上を捨て気味に打って右辺を分断する手もありました。個人的にはこれが好みなのでこれを選べばよかったかなと少し後悔しました。

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1、5と意気揚々と左辺を分断しに行きましたが7が微妙な手で8.10のキリが思ったより強烈でした。

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ここでは1のコスミツケが良かったです。一見実戦より筋が悪そうに見えますが2のノビに対して3が次にAの5子取りの狙いを残していることがメリットです。

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フリカワリで下辺が白っぽく、左辺が黒っぽくなりました。白の方が薄いのであまり嬉しい展開ではありません。

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1.3とツケ引いたことで大場がA、B、Cの大体3つになりました。急場の左辺を先手で一段落させてそちらに回りたいので単に手を入れるのではなく4のノゾキから左辺の黒を攻めながら自分の石を安定させようとしています。

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後手ではありましたが単に手を入れるより大分地が増えたので成功だと思います。

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1のキリは大きいですが何となくAでコウをしかけられた方が左辺にコウ材があるので白嫌だったような気がします。8を打てたことで一応安心しました。

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少し形勢が悪いと感じていたので1、3と強引に勝負に行きました。4とかわしてくれたので気分的に得しました。

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中央にも右下隅にも地を作れたのでこの分かれは白成功です。形勢も互角になりました。

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2が二重の意味で謎な一手でした。4、6がとにかく大きかったので2と3はお互いそっぽのような感じです。ここを打てたので半目か1目半白が厚くなったような気がしました。どちらも秒読みに入っているのに難しいヨセが多く大変な時間帯です。

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先ほどのハネのもう一つひどい所は1、3がコウ含みで先手になってしまうところです。これならどう考えても三線のワリツギの方が良かったです。

しかし8、10を打てたので白のリードが盤石になりました。7では右辺の2子を取る方が少し大きそうでした。

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最後まで打って白の3目半勝ちになりました。勢いで打ってた部分が多く楽しかったですが所々精彩を欠いている箇所があり勝てたのは運が良かったです。

これで天元戦は初めて予選Aに進めたのでこの機会を大事にして次はもっと良い碁が打てたらと思います。では。