桒原駿の備忘録

囲碁棋士桒原駿のブログです。

今日の手合 20局目

今日打った碁についてまた書いていこうと思います。今回はおかげ杯予選、NHK方式の早碁でした。相手は竹内康祐四段。私の白番です。

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このような立ち上がり。5、6年前によく見かけたような布石ですね。最近では珍しいと思います。

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7は手堅いですが少しありがたかったです。最近の感覚だとコミが大きいのでもっとグイグイやっていかないと黒は勝ちにくい気がします。8にツメられれば白ペースだと思っていました。

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4、6と右辺の黒を攻めつつ8と下辺を囲うことができました。8のような露骨に囲う手はあまり良くないというのが通説ですが、相手の強い石が近くにある場合は侵入が厳しい手になることが多いので囲う手の価値は高いです。この場合は右辺と左下の黒が強い石にあたります。

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実戦。4では左上を消しに行こうと思っていたのですが具体的な良い手が見当たらず左下の黒にプレッシャーをかけることにしました。黒の手抜きに対して即座に6と荒らしにいきました。左上はどうするべきだったのかAIに聞いてみると

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1だそうです!受けてくれれば利かしなのですが、2などと受けてもらえなかった時の後続手はなんと3!思いつきませんでしたが確かに雰囲気は出てますね。また一つAIのすごさに触れました。

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実戦。隅はフリカワリとなり先手を取った黒は11と模様を広げに来ました。サバキの腕の見せ所ですね。現在白は優勢なので無理をし過ぎずある程度荒らせれば勝てそうです。ちなみに

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ここで1とオサエると2のサガリから上手い具合に取れています。

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1、3のツケから左辺を少し荒らすことができました。サバキは難しいですが重要なのは利きがどこにあるかとどの程度荒らせば優勢になるかを意識することです。利きがない方に近寄ったり必要以上に荒らそうとしてツブレてしまうのはあるあるですね(笑)

厚くなった黒は22とさらに広げてきたので二回目のサバキを決行します。

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7が利いているのを活かして1、3から先手で抉ることができました。黒から先手だったはずの19にも先着できたので白不満ありません。

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白地の方が大分多いので今度は黒がサバく番です。相手がサバこうとしてる時に重要なのはどの程度までなら荒らさせても大丈夫かを意識することです。もちろん全部取れればそれが一番だし取りに行かないといけない時もあります。しかし一発勝負の展開は優勢の状況ではありがたくないですよね。なのでまず譲歩の案を練ることをおすすめします。この場合は△の白石を取って3、7の黒が生還することまでは譲歩している態勢です。その代わり1、5の二目脱出と隅への侵入は許していません。

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1、3に対して4が全ての利きを打ち消す好手(カッコ良く言ってみた)。この時相手がぼやいていたのでおそらく見ていなかったのだと思います。

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当初の予定通り譲歩のラインを守りきって先手をとって左辺の一目を取り切りました。依然白優勢です。

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実戦。2がちょっとした小技でただ4と受けると利かされただけになってしまいますが2と3を交換するだけで黒石を重くすることができています。

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この後も危なげなくヨセきって最後は白6目半勝ちでした。全体的にこれという失着はなく完勝と言っても良い内容だったと思います。

おかげ杯の予選自体は二勝した後に決勝で残念ながら負け。若手早碁棋戦の予選は勝つと一日に3局という過酷なスケジュールで、いつも3局目で負けてしまっているので改善していかなければなりませんね。とはいえ2勝はできているので前向きに捉えていこうと思います。ではまた次回お会いしましょう。