桒原駿の備忘録

囲碁棋士桒原駿のブログです。

今日の手合 23局目

また今日打った碁について書いていこうと思います。新人王戦三回戦で勝てば準決勝進出というところ。相手は横塚力七段。横塚先生は小松門下に入る前は元々岩田門下の同門で私が小さい頃からよくお世話になっていた(ボコボコにされていた)先輩です。

私の白番です。

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このような立ち上がり。10では左上にカカる手が先に思いつきましたがあえてこちらを選択しました。

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(14は13の下)

左下はよくある定石から16と趣向を凝らしてみました。この形は以前少し研究していてこれがまずまず有力という結論を出した記憶があります。

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最もよく打たれる変化はこれですが、この場合は左上のシマリとの距離感が良いので白微妙かと思い実戦の変化にしました。

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三々に対して手厚く受けて黒が足早に上辺をヒラいた局面。どこが大きいか判断が難しい所です。

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実戦は1を選びましたがこれは2、4と上から利かされてしまい良くありませんでした。

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ここではこのトビが有力だったようです。続く2に対しては3とカタツけば左上が大きくなる心配もありません。トビ以外では右辺3線のマゲオサエも大きかったようです。

右上の変化は悪くないと思ったのですが全体的に見ると苦手な碁形にしてしまった感じがあったので

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(3は2の下)

このように足早に二子を取ってしまった方が良かったかもしれません。良い悪いという点以外で着手を判断するのは難しいですがこれも勉強ですね。

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1もまた難しい着手でした。高く打つか低く打つかだけでもかなり悩んだのですが下辺を守る手ともかなり悩みました。の打ちこみに対して5~9が見損じを含んだひどい悪手でした。

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元はこのような変化を想定していたのですが、

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当てられた時にこのようにゴリゴリ切っていく手がすごく厳しいことに気づき唖然。方針転換せざるを得ませんでした。

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(3は6の左)

二目を捨てて突き破るフリカワリを選びましたがこれではあまりにひどい。

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少しでもよりつくべく上辺を手筋を駆使して封鎖しましたが左辺の白も封鎖されて生きを強いられてしまっています。

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上辺はまとまりましたが少し届かなそうです。

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(37は40)

下辺によりつこうとした分後手を引いてさらに差が開きここで投了、黒中押し勝ちになりました。

内容は打ち辛い碁形からうっかりが出ての完敗でしたが、普段と違うベクトルで考えることが多く乗り越えるべき壁が見えた感じがした勉強になる楽しい一局でした。次の碁で成果が出るかは分かりませんが勝ち負けにこだわらず一つずつ強くなっていこうと思います。

新人王戦に関しては準決勝目前で敗退となってしまいましたが、強い相手ばかりに本戦で3勝できたのは今までの最多が1勝だったのを鑑みてもある程度成長できているのかなと思います。新聞などに棋譜が乗りやすい棋戦でもあるので来期はさらに良い碁をお見せできるよう精進します。